chapter35
- 2014/06/18 15:03
- Category: Story
こんにちは!今日はストーリーの更新になります。
今回場面転換が多くて撮影が本当に大変でした^^;代わり映えのしない構図のSSが
続いてしまってちょっと反省。
でもとりあえず更新できたので、良かったww
これが終わったらコミュイベ用のセクシーポーズを自作してみようと思ってます♪
ではでは本編にいきますね~
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

隣で映画に夢中になっているリサの長い髪が俺の肩に触れる度、映画のことなんか頭から消えてしまう。
観たかった映画なのにまるで頭に入ってこない。
恋愛映画だと狙いすぎだと思われると思って、折角好きなアクション映画にしたってのに。

告白する前からこんなテンションでどうする。
男ならもっと落ち着け!
どんな答えでも受け止める覚悟はできてるんだ。今更ジタバタしたって何にも変わらない。
そう自分に言い聞かせてもバクバクと跳ねまくる俺の心臓はまるで言うことを聞いてくれない。

「面白かったね~!・・・・ジェイク?」
「え?ああ・・・。そ、そうだな!すげえスタントだったなあ~」
内容なんかほとんど憶えていないってのに、リサに問いかけに慌てて頷く。

「ジェイクの作ってくれたフルーツタルトもすっごく美味しかったし、幸せ~♪買いに行ってもいっつも品切れしてるんだもん」

「だから食いたい時は俺に直接言えって言ってるだろ。売り切れたって帰りに作って持ってきてやるから」
リサは細い体に似合わず沢山食べる。
特にスイーツには目がないようで、俺の作ったものはなんでも美味しいとぱくぱく食べてくれる。それが俺にとってはすげえ嬉しくて。
ダイエットだの、美容に悪いだの言って食わない女ほどつまんねーもんはない。

「でも仕事で疲れてるのにまた作ってもらうのって気が引けちゃうから言えないよ」
「だから・・・俺がいいって言ってるだろ」
「ありがと。でも私が太ったらジェイクの責任だからね」
笑ってそういうリサの笑顔が眩しい。

「責任ならいつでも取ってやるから心配すんな」
リサが少々太ったところで可愛いのは変わりない。いや、却って他の男の目から遠ざけられる分そっちの方がいいのかもしれないな・・・なんてバカな考えがわりと真剣に浮かんでしまう。

「・・・・責任取るって。何言ってんの、ジェイク」
俺の言葉に驚いた表情を浮かべるリサ。
こいつ・・・本当に鈍いのか、それとも小悪魔なのか?!
俺の気持ちなんかとっくに分かってるだろ。

「だからいい加減気がつけよ。わかんねーフリしてるだけだったら怒るぞ」

「・・・・ちゃんと言ってくれなきゃわかんないって言ったでしょ」
拗ねたように目をそらすリサは今すぐにでも抱きしめてしまいたいほど、可愛いくて。
もう小悪魔でもなんでも構わねー!!

「俺お前のことが・・・」
好きだ、と言おうとしたその瞬間に家の扉が勢い良く開いて飛び込んでくる女がいた。

「ジェイクッーーーーーーー!!!やっと会えたっ!」
呆気に取られている俺の腕のしがみつくその女は・・・。

「マリア?!お前っ・・・なんでここに?!」
「決まってるでしょ!ジェイク全然連絡くれないんだもん!将来を誓ったお嫁さんに対して冷たすぎるんじゃない~?」
「将来って・・・おま・・・」
マリアのその言葉を聞いた途端、隣にいるリサの視線がすっと冷たいものに変わっていくのが分かった。

「リ、リサ!こいつは幼馴染のマリアだ。付き合ってもねーし、許婚とかそんなんでもねーから!」

慌てて弁解する俺に冷たい視線を向けたままのリサに思わず冷や汗が出てくる。

「ちょっとお~?ジェイクそんな言い方ないでしょ?俺のお嫁さんにしてやるって言ってくれたじゃない!嘘つき!!」

「は?!そんなこと言ったのはガキの頃だろうが!しかもお前が言わせたんだろっ」

俺の家の近くに住んでいたマリアはガキの頃よく俺とカイトの後をくっついてきた。
何かあるとすぐ泣くマリアを宥めていると「ジェイクのお嫁さんにしてくれるなら泣き止む」と半ば脅迫されたようなもんだったのに、それを俺が言ったことになってんのか?!

「それよりこの人だれ」
マリアがじっとリサを見つめる。その目はどう見ても臨戦態勢で、穏やかじゃない。

「お、俺の・・・」
彼女だ、と言おうとしてでもまだリサからの答えを聞いていないことに気が着く。
「友達・・・だ」
友達、と聞いたリサの視線が益々険しくなる。ちょっと待てよ!!俺は一体どういったら正解だったんだ?!!

「ふ~ん。けっこう歳いってるよね。私の方が髪も肌もツヤツヤだもん」
「ライバル意識燃やされても、迷惑なの。私はジェイクのことなーんとも思ってないからどうぞご心配なく」
リサとマリアの間に・・・今・・・火花が散っていたように・・・見えた・・・。
つーか待て!!俺のこと何とも思ってないって、一体どういうことだよ??!

「ちょっとリサ!待てって!」
背を向けて家から出て行こうとするリサを必死で止める。今ここで帰らせたら誤解が解ける気がしない。

「二人でお話したいでしょ?お嫁さんなんだから。私は邪魔者みたいだから帰るわね」
にっこり笑顔を作るリサは怖すぎる。
女ってのは怒りがピークに達するとこんな風に他人行儀に振舞う。
それを放っておくと爆発して手がつけられなくなる。

「違うんだって!ガキの頃の口約束だよ、そんなの。よくあることだろ?」
「口約束でも本当の約束でも私には関係ないから。じゃあね、ジェイク」
「ちょっと待てって!!」

追いかけていこうとする俺の腕をマリアが強い力で引っ張った。
「ジェイクと私はもうキスまでした仲なんだからね!!邪魔者が入る隙間なんかないのっ!!」
「マリア!!お前いい加減にしろよ!!」

「だって本当のことだもん!」
「あれは勝手にお前が・・・・!!リサ、違うんだ、聞いてくれ・・・・ってもういねーじゃねーか!!」

完全に終わった・・・・。そう思ったら体中の力が抜けてきて俺は頭を抱えながらソファに座り込む。
マリアとキスをしたことは確かにある。でも断じて俺の意志じゃない。
俺が住んでた街を出て行く時にマリアにふいうちで喰らったものだった。男として情けなさすぎるが、マリアの行動はいつも突拍子がなく予測できるもんじゃない。

「・・・ジェイク、あの人のこと好きなんでしょ」
「ああ!そうだよ!悪いか」
「悪いもん。私なんかずっーーーーっと前からジェイクのこと好きだったんだから!!私の方が先なの!」

「俺は物じゃねーっつーの・・・。マリア、お前何しに来たんだよ」
「私もそろそろ就職の情報集めしなきゃって思ったの。今ちょうど大学休みだし」
マリアは確か今20歳で地元の大学に通っていたはずだ。就職活動と聞いて嫌な予感が頭をかすめる。

「おまえ、まさかこっちで仕事しようとか思ってんじゃねーだろうな?」
「その通り♪都会のほうが仕事も多いし、お給料もいいでしょ!それにジェイクに変な女が寄り付かないように見張ってなきゃだし」
「・・・で、宿泊先は?どこのホテルだ?」
鬱陶しいとは思いながら、妹のような存在のマリアを放り出すわけにもいかず尋ねた。

「え?そんなのないよ。ここに泊まる予定に決まってるじゃーーん」
あっけらかんと言うマリアに俺の頭痛は益々酷くなっていく。
「ここは俺の家じゃねーんだよ。友達の借りてる家を又借りしてんだ。そいつにちゃんと許可とらないと、ここには泊まれない」

「じゃあその人に許可もらってくる。どこにいるの?」
「今カイトとデート中だ」
「ええ~?!カイトの彼女なの?!・・・・へえ~~あの変わり者のカイトにもついにちゃんとした彼女ができたんだ~!!」

「お前・・・少し黙れ」
痛む頭を押さえながら俺は深い深いため息をついた。

「かっこ悪いところを見せたね。悪かった」
薄く笑いながら口元についた血をぬぐうマーク。
先ほどのカフェでの喧嘩を思い返せば返すほど、マークの取った行動は理解できなかった。

「大丈夫?タオル、濡らしてこようか?」
「いや、もう平気だよ。それより俺に話があったんだろ?」

「・・・・どうして、あんなにレイを挑発するようなことを言ったの?」
二人の間に起きたことはただレイの婚約者を奪い合っただけとはとても思えない。
そんな風に思ってしまうほど、マークはレイに対して酷い言動を繰り返していた。
それはどこか・・・自分の気持ちに気が付いて欲しいというサインのように思えてしまって。

「別に・・・。ただの喧嘩だよ。お互い過去のことにまだ拘っているんだろう」
「拘っているのは貴方の方じゃないの?」
私の言葉に伏せていた顔を上げるマーク。

「どういう意味かな」

「私・・・・貴方を呼び出したのは関係を終わらせるつもりだったのよ。貴方は素敵な人だけど、気持ちに応えることはできないって思ったの。でも・・・きっと貴方は私のこともサラさんのことも好きじゃない。貴方が好きなのはレイね」

「何を・・・言ってるんだ。言っていることがよくわからない」
私の指摘に、初めてマークのポーカーフェイスが崩れた。表情に焦りが滲んでいるのが分かる。
自分の予想が当たったことを知って、私は何故マークがあれだけレイに対して不可解な行動を取っていたのかその全てに納得がいった。

「自分の気持ちは自分が一番分かっているはずよ。・・・さよなら、マーク」
マークに背を向けて歩き出す。私はそのまま一度も振り返らなかった。

強い酒をどれだけ飲んでも全く酔いが回る気配がない。嫌なことを忘れようと酒に逃げることすら、俺には許されていないらしい。
(貴方が好きなのはレイね)
先ほどのカレンの言葉が頭の中に蘇る。

その通りだった。俺が好きなのはレイただ一人だけだ。
レイと俺は気があってよく一緒につるんでいた。だからレイが同性を好きになる可能性などこれっぽちもないことは俺が一番よくわかっていたのに。
叶うことはないとわかっていても、気持ちを止められるものではなくて。

決してレイには言えないことだと、自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど想いは強くなっていく。
そんな時だった。
レイが嬉しそうに婚約者だとサラを紹介したのは。

「お前には一番最初に報告しなきゃいけないと思ったんだ」
レイのその言葉は嬉しかったが、同時にどこまでも俺を傷つけるものだった。
レイにとって俺はただの友人。それが親友と呼べるものであったとしても、二人の間には決して恋愛感情などは生まれない。

それでも。その時の俺はレイの幸せを一番に願い、親友としてのポジションに甘んじようと決めレイの婚約を祝福した。
それを壊したのはあの婚約者サラだ。

「マークに相談したいことがあるの」
レイの仕事がようやく軌道に乗り始め、新しい作品を次々に作らなければいけないという時サラは俺に幾度となくそう相談を持ちかけてきた。

その相談のほとんどがレイが仕事ばかりして自分を省みないというもので、その相談を聞けば聞くほどに俺はサラという女の自分勝手さに内心腹を立てていた。
婚約までしているというのに、これ以上何を望むというのか。
レイのことを見守ってやるのが婚約者という存在ではないのか。
だがそれをおくびにも出さず、根気強く俺はサラを励ました。全てはレイのためだと言い聞かせて。

ある夜、俺の家に泣きながらサラがやって来た。
俺は嫌な予感がするのを抑えながらいつものように泣きじゃくるサラの愚痴を聞いてやった。

「私・・・マークみたいな優しい人を好きになればよかった」

「レイは優しい奴だよ。不器用なだけなんだ。わかってやってくれ」
タクシーを呼ぼうと俺が席を立ったその時。サラは俺の背中に縋りついた。

「レイは私より仕事の方が大事なのよ。私には貴方みたいないつも側にいてくれる人の方がいいの・・・」

「サラ・・・手を離してくれないか。レイは今一番大事な時期なんだよ」
「貴方が好きなの!!もう分かってるでしょ?私の気持ちは・・・もう・・・レイにはないのよ」
最低な女だった。俺とレイの仲を知っていながら、自分のことだけしか考えていない。浅はかでどこまでも狡猾な女。
そんな女がレイの大事な存在であることが、俺には許せなかった。

サラの手を突き放すことは簡単だった。だがそうすればこの女はしゃあしゃあと何食わぬ顔でレイの隣に居座るだろう。それを考えるだけで吐き気すらしてくる。
この女をレイから離さなくてはいけない。たとえ、俺が憎まれることになろうとも。

俺は覚悟を決め、サラの手を取った。
あとはあっけないほど簡単に事が進んだ。

甘い言葉を耳元で囁くと簡単にサラは落ちて、俺と一緒に暮らすようになった。
同じ空気を吸うことすらおぞましい女だったが、レイの為に俺は耐えた。

一番辛かったのは・・・・。このことがレイに知れたときの、レイのあの目・・・・。

親友と婚約者を一気に失ったレイの気持ちは俺には痛いほど分かった。俺もそれだけ大事なものを
永遠に失ったのだから。
それでも。俺は今でもあの行動を後悔していない。サラは・・・あの女はレイの側にいてはいけない女だった。

「・・・・カレン、なら」
あの女なら。

俺は許すことができるのだろうか・・・・・・・・。
chapter36へ続く
今回場面転換が多くて撮影が本当に大変でした^^;代わり映えのしない構図のSSが
続いてしまってちょっと反省。
でもとりあえず更新できたので、良かったww
これが終わったらコミュイベ用のセクシーポーズを自作してみようと思ってます♪
ではでは本編にいきますね~
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

隣で映画に夢中になっているリサの長い髪が俺の肩に触れる度、映画のことなんか頭から消えてしまう。
観たかった映画なのにまるで頭に入ってこない。
恋愛映画だと狙いすぎだと思われると思って、折角好きなアクション映画にしたってのに。

告白する前からこんなテンションでどうする。
男ならもっと落ち着け!
どんな答えでも受け止める覚悟はできてるんだ。今更ジタバタしたって何にも変わらない。
そう自分に言い聞かせてもバクバクと跳ねまくる俺の心臓はまるで言うことを聞いてくれない。

「面白かったね~!・・・・ジェイク?」
「え?ああ・・・。そ、そうだな!すげえスタントだったなあ~」
内容なんかほとんど憶えていないってのに、リサに問いかけに慌てて頷く。

「ジェイクの作ってくれたフルーツタルトもすっごく美味しかったし、幸せ~♪買いに行ってもいっつも品切れしてるんだもん」

「だから食いたい時は俺に直接言えって言ってるだろ。売り切れたって帰りに作って持ってきてやるから」
リサは細い体に似合わず沢山食べる。
特にスイーツには目がないようで、俺の作ったものはなんでも美味しいとぱくぱく食べてくれる。それが俺にとってはすげえ嬉しくて。
ダイエットだの、美容に悪いだの言って食わない女ほどつまんねーもんはない。

「でも仕事で疲れてるのにまた作ってもらうのって気が引けちゃうから言えないよ」
「だから・・・俺がいいって言ってるだろ」
「ありがと。でも私が太ったらジェイクの責任だからね」
笑ってそういうリサの笑顔が眩しい。

「責任ならいつでも取ってやるから心配すんな」
リサが少々太ったところで可愛いのは変わりない。いや、却って他の男の目から遠ざけられる分そっちの方がいいのかもしれないな・・・なんてバカな考えがわりと真剣に浮かんでしまう。

「・・・・責任取るって。何言ってんの、ジェイク」
俺の言葉に驚いた表情を浮かべるリサ。
こいつ・・・本当に鈍いのか、それとも小悪魔なのか?!
俺の気持ちなんかとっくに分かってるだろ。

「だからいい加減気がつけよ。わかんねーフリしてるだけだったら怒るぞ」

「・・・・ちゃんと言ってくれなきゃわかんないって言ったでしょ」
拗ねたように目をそらすリサは今すぐにでも抱きしめてしまいたいほど、可愛いくて。
もう小悪魔でもなんでも構わねー!!

「俺お前のことが・・・」
好きだ、と言おうとしたその瞬間に家の扉が勢い良く開いて飛び込んでくる女がいた。

「ジェイクッーーーーーーー!!!やっと会えたっ!」
呆気に取られている俺の腕のしがみつくその女は・・・。

「マリア?!お前っ・・・なんでここに?!」
「決まってるでしょ!ジェイク全然連絡くれないんだもん!将来を誓ったお嫁さんに対して冷たすぎるんじゃない~?」
「将来って・・・おま・・・」
マリアのその言葉を聞いた途端、隣にいるリサの視線がすっと冷たいものに変わっていくのが分かった。

「リ、リサ!こいつは幼馴染のマリアだ。付き合ってもねーし、許婚とかそんなんでもねーから!」

慌てて弁解する俺に冷たい視線を向けたままのリサに思わず冷や汗が出てくる。

「ちょっとお~?ジェイクそんな言い方ないでしょ?俺のお嫁さんにしてやるって言ってくれたじゃない!嘘つき!!」

「は?!そんなこと言ったのはガキの頃だろうが!しかもお前が言わせたんだろっ」

俺の家の近くに住んでいたマリアはガキの頃よく俺とカイトの後をくっついてきた。
何かあるとすぐ泣くマリアを宥めていると「ジェイクのお嫁さんにしてくれるなら泣き止む」と半ば脅迫されたようなもんだったのに、それを俺が言ったことになってんのか?!

「それよりこの人だれ」
マリアがじっとリサを見つめる。その目はどう見ても臨戦態勢で、穏やかじゃない。

「お、俺の・・・」
彼女だ、と言おうとしてでもまだリサからの答えを聞いていないことに気が着く。
「友達・・・だ」
友達、と聞いたリサの視線が益々険しくなる。ちょっと待てよ!!俺は一体どういったら正解だったんだ?!!

「ふ~ん。けっこう歳いってるよね。私の方が髪も肌もツヤツヤだもん」
「ライバル意識燃やされても、迷惑なの。私はジェイクのことなーんとも思ってないからどうぞご心配なく」
リサとマリアの間に・・・今・・・火花が散っていたように・・・見えた・・・。
つーか待て!!俺のこと何とも思ってないって、一体どういうことだよ??!

「ちょっとリサ!待てって!」
背を向けて家から出て行こうとするリサを必死で止める。今ここで帰らせたら誤解が解ける気がしない。

「二人でお話したいでしょ?お嫁さんなんだから。私は邪魔者みたいだから帰るわね」
にっこり笑顔を作るリサは怖すぎる。
女ってのは怒りがピークに達するとこんな風に他人行儀に振舞う。
それを放っておくと爆発して手がつけられなくなる。

「違うんだって!ガキの頃の口約束だよ、そんなの。よくあることだろ?」
「口約束でも本当の約束でも私には関係ないから。じゃあね、ジェイク」
「ちょっと待てって!!」

追いかけていこうとする俺の腕をマリアが強い力で引っ張った。
「ジェイクと私はもうキスまでした仲なんだからね!!邪魔者が入る隙間なんかないのっ!!」
「マリア!!お前いい加減にしろよ!!」

「だって本当のことだもん!」
「あれは勝手にお前が・・・・!!リサ、違うんだ、聞いてくれ・・・・ってもういねーじゃねーか!!」

完全に終わった・・・・。そう思ったら体中の力が抜けてきて俺は頭を抱えながらソファに座り込む。
マリアとキスをしたことは確かにある。でも断じて俺の意志じゃない。
俺が住んでた街を出て行く時にマリアにふいうちで喰らったものだった。男として情けなさすぎるが、マリアの行動はいつも突拍子がなく予測できるもんじゃない。

「・・・ジェイク、あの人のこと好きなんでしょ」
「ああ!そうだよ!悪いか」
「悪いもん。私なんかずっーーーーっと前からジェイクのこと好きだったんだから!!私の方が先なの!」

「俺は物じゃねーっつーの・・・。マリア、お前何しに来たんだよ」
「私もそろそろ就職の情報集めしなきゃって思ったの。今ちょうど大学休みだし」
マリアは確か今20歳で地元の大学に通っていたはずだ。就職活動と聞いて嫌な予感が頭をかすめる。

「おまえ、まさかこっちで仕事しようとか思ってんじゃねーだろうな?」
「その通り♪都会のほうが仕事も多いし、お給料もいいでしょ!それにジェイクに変な女が寄り付かないように見張ってなきゃだし」
「・・・で、宿泊先は?どこのホテルだ?」
鬱陶しいとは思いながら、妹のような存在のマリアを放り出すわけにもいかず尋ねた。

「え?そんなのないよ。ここに泊まる予定に決まってるじゃーーん」
あっけらかんと言うマリアに俺の頭痛は益々酷くなっていく。
「ここは俺の家じゃねーんだよ。友達の借りてる家を又借りしてんだ。そいつにちゃんと許可とらないと、ここには泊まれない」

「じゃあその人に許可もらってくる。どこにいるの?」
「今カイトとデート中だ」
「ええ~?!カイトの彼女なの?!・・・・へえ~~あの変わり者のカイトにもついにちゃんとした彼女ができたんだ~!!」

「お前・・・少し黙れ」
痛む頭を押さえながら俺は深い深いため息をついた。

「かっこ悪いところを見せたね。悪かった」
薄く笑いながら口元についた血をぬぐうマーク。
先ほどのカフェでの喧嘩を思い返せば返すほど、マークの取った行動は理解できなかった。

「大丈夫?タオル、濡らしてこようか?」
「いや、もう平気だよ。それより俺に話があったんだろ?」

「・・・・どうして、あんなにレイを挑発するようなことを言ったの?」
二人の間に起きたことはただレイの婚約者を奪い合っただけとはとても思えない。
そんな風に思ってしまうほど、マークはレイに対して酷い言動を繰り返していた。
それはどこか・・・自分の気持ちに気が付いて欲しいというサインのように思えてしまって。

「別に・・・。ただの喧嘩だよ。お互い過去のことにまだ拘っているんだろう」
「拘っているのは貴方の方じゃないの?」
私の言葉に伏せていた顔を上げるマーク。

「どういう意味かな」

「私・・・・貴方を呼び出したのは関係を終わらせるつもりだったのよ。貴方は素敵な人だけど、気持ちに応えることはできないって思ったの。でも・・・きっと貴方は私のこともサラさんのことも好きじゃない。貴方が好きなのはレイね」

「何を・・・言ってるんだ。言っていることがよくわからない」
私の指摘に、初めてマークのポーカーフェイスが崩れた。表情に焦りが滲んでいるのが分かる。
自分の予想が当たったことを知って、私は何故マークがあれだけレイに対して不可解な行動を取っていたのかその全てに納得がいった。

「自分の気持ちは自分が一番分かっているはずよ。・・・さよなら、マーク」
マークに背を向けて歩き出す。私はそのまま一度も振り返らなかった。

強い酒をどれだけ飲んでも全く酔いが回る気配がない。嫌なことを忘れようと酒に逃げることすら、俺には許されていないらしい。
(貴方が好きなのはレイね)
先ほどのカレンの言葉が頭の中に蘇る。

その通りだった。俺が好きなのはレイただ一人だけだ。
レイと俺は気があってよく一緒につるんでいた。だからレイが同性を好きになる可能性などこれっぽちもないことは俺が一番よくわかっていたのに。
叶うことはないとわかっていても、気持ちを止められるものではなくて。

決してレイには言えないことだと、自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど想いは強くなっていく。
そんな時だった。
レイが嬉しそうに婚約者だとサラを紹介したのは。

「お前には一番最初に報告しなきゃいけないと思ったんだ」
レイのその言葉は嬉しかったが、同時にどこまでも俺を傷つけるものだった。
レイにとって俺はただの友人。それが親友と呼べるものであったとしても、二人の間には決して恋愛感情などは生まれない。

それでも。その時の俺はレイの幸せを一番に願い、親友としてのポジションに甘んじようと決めレイの婚約を祝福した。
それを壊したのはあの婚約者サラだ。

「マークに相談したいことがあるの」
レイの仕事がようやく軌道に乗り始め、新しい作品を次々に作らなければいけないという時サラは俺に幾度となくそう相談を持ちかけてきた。

その相談のほとんどがレイが仕事ばかりして自分を省みないというもので、その相談を聞けば聞くほどに俺はサラという女の自分勝手さに内心腹を立てていた。
婚約までしているというのに、これ以上何を望むというのか。
レイのことを見守ってやるのが婚約者という存在ではないのか。
だがそれをおくびにも出さず、根気強く俺はサラを励ました。全てはレイのためだと言い聞かせて。

ある夜、俺の家に泣きながらサラがやって来た。
俺は嫌な予感がするのを抑えながらいつものように泣きじゃくるサラの愚痴を聞いてやった。

「私・・・マークみたいな優しい人を好きになればよかった」

「レイは優しい奴だよ。不器用なだけなんだ。わかってやってくれ」
タクシーを呼ぼうと俺が席を立ったその時。サラは俺の背中に縋りついた。

「レイは私より仕事の方が大事なのよ。私には貴方みたいないつも側にいてくれる人の方がいいの・・・」

「サラ・・・手を離してくれないか。レイは今一番大事な時期なんだよ」
「貴方が好きなの!!もう分かってるでしょ?私の気持ちは・・・もう・・・レイにはないのよ」
最低な女だった。俺とレイの仲を知っていながら、自分のことだけしか考えていない。浅はかでどこまでも狡猾な女。
そんな女がレイの大事な存在であることが、俺には許せなかった。

サラの手を突き放すことは簡単だった。だがそうすればこの女はしゃあしゃあと何食わぬ顔でレイの隣に居座るだろう。それを考えるだけで吐き気すらしてくる。
この女をレイから離さなくてはいけない。たとえ、俺が憎まれることになろうとも。

俺は覚悟を決め、サラの手を取った。
あとはあっけないほど簡単に事が進んだ。

甘い言葉を耳元で囁くと簡単にサラは落ちて、俺と一緒に暮らすようになった。
同じ空気を吸うことすらおぞましい女だったが、レイの為に俺は耐えた。

一番辛かったのは・・・・。このことがレイに知れたときの、レイのあの目・・・・。

親友と婚約者を一気に失ったレイの気持ちは俺には痛いほど分かった。俺もそれだけ大事なものを
永遠に失ったのだから。
それでも。俺は今でもあの行動を後悔していない。サラは・・・あの女はレイの側にいてはいけない女だった。

「・・・・カレン、なら」
あの女なら。

俺は許すことができるのだろうか・・・・・・・・。
chapter36へ続く
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ahiruchanet
あと一歩!もう少しで・・・ってとこで何ですか彼女は?
あの強引な感じ。リサの方が可愛いのにー><
あんな強引な女の子じゃジェイクの元気も全部吸い取られちゃうよ!!
しかしリサも怒りながら火花散らしてましたね!
リサもちゃんと戦ってくれたら・・・いいんだけどなー
マークの真相を読んでいて、彼は彼なりにレイを守ろうとしてした事だったんだと
わかり、ちょっと安心しました。
嫉妬で自分勝手に振り回したのであれば、絶対嫌いになってたけど
これはねー許せるでしょう。
目的の違いですから(´・ω・`)自分のためではなく
レイのためだったのなら、マーク・・・自分が憎まれると分かってて行動したんだなー。
愛だなぁ。
でもね、でも・・・カレンは信じていい!
カレンはいい女だ!!><そして、この事実はずっと秘密にしていくのでしょうか・・。
マークの印象が変わってこれからの展開がもっと気になってきました~^^
そしてコミュポーズ頑張って下さい!私はもう既に撮影してしまいましたww
楽しみにしてまーす!