chapter8
- 2013/05/30 17:12
- Category: Story
こんにちは!週イチのストーリー更新を目指して頑張ってますが
早くも危うくなっておりました^^;
色々なことに手をだしすぎるとダメですね><
ではでは本編スタートです!

「なかなか面白かったんじゃないか」
「そう?意外だったわ。ずっと寝てるんじゃないかと思ってたけど」
映画を観た帰り、空はすっかり暗くなってしまったが都会のネオンがまるで昼間のように明るく照らしていた。
レイと観た映画は私好みの純愛映画だ。雑誌の評価はあまり良くなかったけれど十分に楽しめた。
純愛なんて遊び人のこの男にはくだらないと思われそうだったから意外だった。
「こう見えても映画は色々観てる」
レイが次々に上げていく作品は私の好みと完全に合致する、恋愛ロマンスばかり。

「本当に観てるの?そういうのが好きだと女と話があわせられるとでも思ってるんじゃない」
「ばれたか」
そう笑うレイはやっぱり第一印象の通り、女好きのする顔だと改めて感じる。
この手の危険な魅力のある男に惹かれる女は多いだろう。
私はタイプじゃないけれど。

「私あの映画が観たいのよね。でも仕事でなかなか買いに行くも観る時間もなくって」
私の言う映画は大好きな絵本作家のジャックが原作の映画だ。観たいと思いながら最近の仕事のゴタゴタで買いにいくこともできない。
迫力の大画面と音響で見る映画館もいいけど、家でゆっくり観るのも好きだ。
特にジャックの作品なら何度も観たいから。

「・・・・・DVD持ってるぜ」
「え?本当?」
「あんたさ、ジャックの絵本持ってたけどああいうのが好きなんだ」
「いけない?あの人の作品は全部好きなの。ロマンチックで見てるだけで癒されるんだから」
「へえ・・・。癒し・・・ね。まあいいや。DVD今度貸してやるよ」

「・・・お礼はしないわよ?」
「言われなくても分かってる」
レイが苦笑する。予めこう言っておかないと後々何か要求されたら困る。
油断はできない男だけど・・・悪い奴じゃなさそう。
そんなことを思っているといつの間にか家の前にたどり着いていた。

「じゃあね。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
私達はそれぞれの寝床へ戻っていった。

間違いない。
大きなサングラスではっきり顔は判別できないものの、あれは女優のモニカだ。
モニカの出た映画やドラマはほとんど観ている俺は興奮のあまり叫びだしそうになる。

クールでワイルドな雰囲気の美女モニカはそこに存在しているだけでまるでオーラが違う。
「どうしたんだよ?そんなに覗き込んで」

クライヴが俺の視線の先を追って口をぱくぱくさせる。
「あ、あ、あれ本物か・・・?!」
「だと思う。多分」
「まじかよーーー!おいっ!カイト!お前モニカの席に注文とりに言ったんだろ?なんで言わねえんだよ」
「何を?あの席の女の人がどうかしたのか」

カイトは芸能人にまるっきり興味がない。テレビも見なければ映画も観ない。モニカを目の前にしても気が付かないのも納得だ。
「カイトは全然興味ないんだな・・・。あれ女優だよ」
クライヴがそう言っても気に留める様子もない。

「そうなのか?待ち合わせみたいだからあとで注文取りにきてくれって言われたけど」

「俺が行くっ!!!」
そこで俺はすかさず声を上げる。クライヴに取られてたまるかっ
「ちょっ!ジェイクてめえ!!ここは店長の俺が行くべきだろうが!」
モニカの注文取りを巡ってバトルが始まると思われたその瞬間に店の電話がけたたましく鳴った。
この時間の電話はクライヴの兄でこの店のオーナーでもあるディーノさんだろう。
店の売り上げ状況を聞く為の定期連絡みたいなものだ。

「電話だぜ?」
勝ち誇った顔の俺をクライヴが苦々しく睨みつけた。
「くそっ・・・」
「ジェイク、連れが来たみたいだ。注文取りにいけよ」
カイトに促されて俺は颯爽とモニカの席へ向かった。

・・・が。
そこで足が止まった。
モニカに親しげに話しかけている男に見覚えがあったからだ。
あのキザ男。確か名前はジョシュア。
結婚する身でありながらリサにしつこく言い寄るクズみたいな男がどうしてモニカと・・・。

「遅いわよ。色々と決めることがあるんだから早く来てもらわないと困るの」
「悪かった。・・・それでドレスはもう決めたの?」
「今迷ってるの。一生に一度だからこだわって選ばなきゃね」
「君ならどんなドレスでも綺麗だよ。式場の方にももう連絡しておいたからあとで打ち合わせに行こう」

モニカとジョシュアの二人からはそんな幸せそうな会話が聞こえてくる。
まさか。
ジョシュアの結婚する相手って・・・モニカなのか?
呆然と立ち尽くす俺に気が付いたジョシュアは俺に目で注文を、と合図する。
そのしぐささえ腹がたつほど決まっていて吐き気がした。

俺の胸にふつふつと怒りがこみ上げてくる。
何だって女はこんな男がいいんだ?
女にだらしないのはレイも一緒だが、レイは少なくともジョシュアのような意地汚さはない。
「君、注文を頼むよ」
いつまで経ってもその場から動かない俺に不審げな目を向けながらジョシュアが言った。
なにが君、だ。気色悪くて反吐が出る。気取り屋が。

俺は何も答えずそのまま背を向けて店の中に入り、ディーノさんとの電話を急いで終えたらしいクライヴに向かって吐き出すように言った。

「注文、お前が行けよ」
「どうかしたのか?連れが男だから気に入らないとかだろ」
「何でもいいよ。早く行け」
説明するのも面倒で俺は厨房へと足を向けた。

「なあ、あのエマって子とデートしたか?」
仕事を終えて狭いリビングで寛いでいると、突然ジェイクが尋ねてきた。
エマと電話番号を交換し、何度かメールのやりとりはしていてそう悪くない子だと感じている。
「デートじゃない。一度食事しただけだ」

「二人で、だろ?それをデートって言うんじゃねえの」
「別に・・・。まだ彼女と付き合うとかそういう気持ちになったわけじゃない。誘われたから行った。それだけ」
「ふーん・・・。お前ってなかなか女を好きにならないタイプだよな。昔から」
「お前が惚れっぽいだけだろ」

そう言い返してはみたものの、確かに俺はそんなにすぐ恋だの愛だのと飛びつくタイプではない。
レイの言う様に過去の経験から女性不信までは行かないが、女の子との間に繰り返されるさまざまな面倒なことが嫌なのだろうと思う。
それよりは一人で好きなことをやっていた方がよほどいい。
要は自分勝手な男なのかもしれない。

「レイは?」
「あ~、今仕事中らしい。2階に引き篭もってる」
ジェイクがやれやれと言ったように肩をすくめた。「仕事中」のレイは普段の鷹揚なレイとは人が変わったように神経質になる。俺達が大きな声で騒いだりしたらそれこそ大変だ。
まあ、レイの仕事を考えればそれも納得できないことではないが。
締め切りが近いとぼやいていたレイを思い出しながら、人気があるのも大変だと思う。
「ジェイク?いる?」
その時、古ぼけたドアの向こうから女の声がジェイクを呼んだ。

ジェイクが立ち上がりドアを開け、シャロンを家の中に招じ入れる。
そういえばこの女とジェイクは知り合いだったか。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「明日夜パーティーがあるんだけど来ない?主催してる子から何人か呼んで欲しいって言われてて」

「明日・・・?土曜か・・・悪い。ちょっと用事があって」
「そう。モデルとか沢山集まるのにな~。残念でした」
「お前の狙いはそれ目当てに集まる金持ちだろ」
ジェイクがシャロンをからかうような口調で笑った。
「当たり前でしょ。いい人が見つかるといいけど」
「お前のいい人イコール金持ちで自分に尽くしてくれる男だからな。ハードル高すぎだぜ」

シャロンとジェイクのやり取りを聞いていると、このシャロンという女が最初に出会ったときの印象のままの女なのだと思った。
傲慢で鼻持ちならない女。
俺が一番嫌いなタイプだ。
「そういえばシャロン、エマってモデルと知り合い?」

余計なことをジェイクがシャロンに尋ねる。いちいちそんなことを聞かなくてもいいだろうが。
「・・・知ってるけど。エマがどうかした?」
シャロンの口ぶりはあまりエマのことを快く思っていない様子がありありと伺えた。
面倒なことになりそうだ。そんな予感がする。

「カイトがさ、そのエマとくっつきそうなんだ。デートもしたらしいし」
「ジェイク。別に俺は付き合うつもりはないって言っただろ」
「どうだか。そんなに悪い子じゃないとか言ってたじゃねーか」
俺とジェイクがそんなやりとりをしている間中、シャロンの刺すような視線を感じる。
エマと何か確執のようなものがあるのかもしれないが、それにかかわるのはまっぴらだった。

「ふーん・・・・。エマってやっぱり趣味が悪いわね」
女特有の嫌味が飛んでくる。男と違ってこういう時、女は陰湿だ。俺だけじゃなくエマのことを含めて否定しようとする。

「あんたほど悪趣味じゃないよ。少なくとも拝金主義じゃないからな」
女相手に口げんかするのもみっともないと思ったが、エマのことまで否定的に言うシャロンは許せなかった。どれほど彼女のことを知っているのかはわからないが、俺の前では彼女はシャロンより遥かにいい子だ。
「おいおい・・・。よせって」
ピリピリしたムードが漂い始めてジェイクが慌てて制止に入る。

「自分で男をコントロールできると思ってるんだろうけど、男のこと舐めてるとそのうち痛い目にあうぜ」
俺の言葉にシャロンが強い目線で俺を睨みつける。
モデルだけあって目力がすごいな、などと全く関係ないことを思った。

「あなたには関係ないでしょ。エマのことだけ見てれば?」
こういう時激情して声を張り上げる女と逆に落ち着き払って冷静になるタイプがいるが、シャロンは後者らしい。後者の方が敵に回すとやっかいで面倒なタイプだ。
これ以上この女と関わらない方がいい。俺の頭のなかで警告音が鳴る。
「そうするよ」

シャロンの挑発の言葉を流して、俺は2階へ上がる階段に足をかけた。
chaapter9へ続く
早くも危うくなっておりました^^;
色々なことに手をだしすぎるとダメですね><
ではでは本編スタートです!

「なかなか面白かったんじゃないか」
「そう?意外だったわ。ずっと寝てるんじゃないかと思ってたけど」
映画を観た帰り、空はすっかり暗くなってしまったが都会のネオンがまるで昼間のように明るく照らしていた。
レイと観た映画は私好みの純愛映画だ。雑誌の評価はあまり良くなかったけれど十分に楽しめた。
純愛なんて遊び人のこの男にはくだらないと思われそうだったから意外だった。
「こう見えても映画は色々観てる」
レイが次々に上げていく作品は私の好みと完全に合致する、恋愛ロマンスばかり。

「本当に観てるの?そういうのが好きだと女と話があわせられるとでも思ってるんじゃない」
「ばれたか」
そう笑うレイはやっぱり第一印象の通り、女好きのする顔だと改めて感じる。
この手の危険な魅力のある男に惹かれる女は多いだろう。
私はタイプじゃないけれど。

「私あの映画が観たいのよね。でも仕事でなかなか買いに行くも観る時間もなくって」
私の言う映画は大好きな絵本作家のジャックが原作の映画だ。観たいと思いながら最近の仕事のゴタゴタで買いにいくこともできない。
迫力の大画面と音響で見る映画館もいいけど、家でゆっくり観るのも好きだ。
特にジャックの作品なら何度も観たいから。

「・・・・・DVD持ってるぜ」
「え?本当?」
「あんたさ、ジャックの絵本持ってたけどああいうのが好きなんだ」
「いけない?あの人の作品は全部好きなの。ロマンチックで見てるだけで癒されるんだから」
「へえ・・・。癒し・・・ね。まあいいや。DVD今度貸してやるよ」

「・・・お礼はしないわよ?」
「言われなくても分かってる」
レイが苦笑する。予めこう言っておかないと後々何か要求されたら困る。
油断はできない男だけど・・・悪い奴じゃなさそう。
そんなことを思っているといつの間にか家の前にたどり着いていた。

「じゃあね。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
私達はそれぞれの寝床へ戻っていった。

間違いない。
大きなサングラスではっきり顔は判別できないものの、あれは女優のモニカだ。
モニカの出た映画やドラマはほとんど観ている俺は興奮のあまり叫びだしそうになる。

クールでワイルドな雰囲気の美女モニカはそこに存在しているだけでまるでオーラが違う。
「どうしたんだよ?そんなに覗き込んで」

クライヴが俺の視線の先を追って口をぱくぱくさせる。
「あ、あ、あれ本物か・・・?!」
「だと思う。多分」
「まじかよーーー!おいっ!カイト!お前モニカの席に注文とりに言ったんだろ?なんで言わねえんだよ」
「何を?あの席の女の人がどうかしたのか」

カイトは芸能人にまるっきり興味がない。テレビも見なければ映画も観ない。モニカを目の前にしても気が付かないのも納得だ。
「カイトは全然興味ないんだな・・・。あれ女優だよ」
クライヴがそう言っても気に留める様子もない。

「そうなのか?待ち合わせみたいだからあとで注文取りにきてくれって言われたけど」

「俺が行くっ!!!」
そこで俺はすかさず声を上げる。クライヴに取られてたまるかっ
「ちょっ!ジェイクてめえ!!ここは店長の俺が行くべきだろうが!」
モニカの注文取りを巡ってバトルが始まると思われたその瞬間に店の電話がけたたましく鳴った。
この時間の電話はクライヴの兄でこの店のオーナーでもあるディーノさんだろう。
店の売り上げ状況を聞く為の定期連絡みたいなものだ。

「電話だぜ?」
勝ち誇った顔の俺をクライヴが苦々しく睨みつけた。
「くそっ・・・」
「ジェイク、連れが来たみたいだ。注文取りにいけよ」
カイトに促されて俺は颯爽とモニカの席へ向かった。

・・・が。
そこで足が止まった。
モニカに親しげに話しかけている男に見覚えがあったからだ。
あのキザ男。確か名前はジョシュア。
結婚する身でありながらリサにしつこく言い寄るクズみたいな男がどうしてモニカと・・・。

「遅いわよ。色々と決めることがあるんだから早く来てもらわないと困るの」
「悪かった。・・・それでドレスはもう決めたの?」
「今迷ってるの。一生に一度だからこだわって選ばなきゃね」
「君ならどんなドレスでも綺麗だよ。式場の方にももう連絡しておいたからあとで打ち合わせに行こう」

モニカとジョシュアの二人からはそんな幸せそうな会話が聞こえてくる。
まさか。
ジョシュアの結婚する相手って・・・モニカなのか?
呆然と立ち尽くす俺に気が付いたジョシュアは俺に目で注文を、と合図する。
そのしぐささえ腹がたつほど決まっていて吐き気がした。

俺の胸にふつふつと怒りがこみ上げてくる。
何だって女はこんな男がいいんだ?
女にだらしないのはレイも一緒だが、レイは少なくともジョシュアのような意地汚さはない。
「君、注文を頼むよ」
いつまで経ってもその場から動かない俺に不審げな目を向けながらジョシュアが言った。
なにが君、だ。気色悪くて反吐が出る。気取り屋が。

俺は何も答えずそのまま背を向けて店の中に入り、ディーノさんとの電話を急いで終えたらしいクライヴに向かって吐き出すように言った。

「注文、お前が行けよ」
「どうかしたのか?連れが男だから気に入らないとかだろ」
「何でもいいよ。早く行け」
説明するのも面倒で俺は厨房へと足を向けた。

「なあ、あのエマって子とデートしたか?」
仕事を終えて狭いリビングで寛いでいると、突然ジェイクが尋ねてきた。
エマと電話番号を交換し、何度かメールのやりとりはしていてそう悪くない子だと感じている。
「デートじゃない。一度食事しただけだ」

「二人で、だろ?それをデートって言うんじゃねえの」
「別に・・・。まだ彼女と付き合うとかそういう気持ちになったわけじゃない。誘われたから行った。それだけ」
「ふーん・・・。お前ってなかなか女を好きにならないタイプだよな。昔から」
「お前が惚れっぽいだけだろ」

そう言い返してはみたものの、確かに俺はそんなにすぐ恋だの愛だのと飛びつくタイプではない。
レイの言う様に過去の経験から女性不信までは行かないが、女の子との間に繰り返されるさまざまな面倒なことが嫌なのだろうと思う。
それよりは一人で好きなことをやっていた方がよほどいい。
要は自分勝手な男なのかもしれない。

「レイは?」
「あ~、今仕事中らしい。2階に引き篭もってる」
ジェイクがやれやれと言ったように肩をすくめた。「仕事中」のレイは普段の鷹揚なレイとは人が変わったように神経質になる。俺達が大きな声で騒いだりしたらそれこそ大変だ。
まあ、レイの仕事を考えればそれも納得できないことではないが。
締め切りが近いとぼやいていたレイを思い出しながら、人気があるのも大変だと思う。
「ジェイク?いる?」
その時、古ぼけたドアの向こうから女の声がジェイクを呼んだ。

ジェイクが立ち上がりドアを開け、シャロンを家の中に招じ入れる。
そういえばこの女とジェイクは知り合いだったか。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「明日夜パーティーがあるんだけど来ない?主催してる子から何人か呼んで欲しいって言われてて」

「明日・・・?土曜か・・・悪い。ちょっと用事があって」
「そう。モデルとか沢山集まるのにな~。残念でした」
「お前の狙いはそれ目当てに集まる金持ちだろ」
ジェイクがシャロンをからかうような口調で笑った。
「当たり前でしょ。いい人が見つかるといいけど」
「お前のいい人イコール金持ちで自分に尽くしてくれる男だからな。ハードル高すぎだぜ」

シャロンとジェイクのやり取りを聞いていると、このシャロンという女が最初に出会ったときの印象のままの女なのだと思った。
傲慢で鼻持ちならない女。
俺が一番嫌いなタイプだ。
「そういえばシャロン、エマってモデルと知り合い?」

余計なことをジェイクがシャロンに尋ねる。いちいちそんなことを聞かなくてもいいだろうが。
「・・・知ってるけど。エマがどうかした?」
シャロンの口ぶりはあまりエマのことを快く思っていない様子がありありと伺えた。
面倒なことになりそうだ。そんな予感がする。

「カイトがさ、そのエマとくっつきそうなんだ。デートもしたらしいし」
「ジェイク。別に俺は付き合うつもりはないって言っただろ」
「どうだか。そんなに悪い子じゃないとか言ってたじゃねーか」
俺とジェイクがそんなやりとりをしている間中、シャロンの刺すような視線を感じる。
エマと何か確執のようなものがあるのかもしれないが、それにかかわるのはまっぴらだった。

「ふーん・・・・。エマってやっぱり趣味が悪いわね」
女特有の嫌味が飛んでくる。男と違ってこういう時、女は陰湿だ。俺だけじゃなくエマのことを含めて否定しようとする。

「あんたほど悪趣味じゃないよ。少なくとも拝金主義じゃないからな」
女相手に口げんかするのもみっともないと思ったが、エマのことまで否定的に言うシャロンは許せなかった。どれほど彼女のことを知っているのかはわからないが、俺の前では彼女はシャロンより遥かにいい子だ。
「おいおい・・・。よせって」
ピリピリしたムードが漂い始めてジェイクが慌てて制止に入る。

「自分で男をコントロールできると思ってるんだろうけど、男のこと舐めてるとそのうち痛い目にあうぜ」
俺の言葉にシャロンが強い目線で俺を睨みつける。
モデルだけあって目力がすごいな、などと全く関係ないことを思った。

「あなたには関係ないでしょ。エマのことだけ見てれば?」
こういう時激情して声を張り上げる女と逆に落ち着き払って冷静になるタイプがいるが、シャロンは後者らしい。後者の方が敵に回すとやっかいで面倒なタイプだ。
これ以上この女と関わらない方がいい。俺の頭のなかで警告音が鳴る。
「そうするよ」

シャロンの挑発の言葉を流して、俺は2階へ上がる階段に足をかけた。
chaapter9へ続く
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