Life is the sum of all your choices

こんにちは!

今日は衝動的にやりたくなった一話完結のショートストーリーです!
舞台(内装・建築)を久々に全部自分でやったので、思ってた以上に時間が
かかりましたね~><
メインストーリーの更新を楽しみにしてくれている方がいたらごめんなさい。
来週はメインの方をUPしたいと思います。拍手のお返事も来週には必ず><!

今回のお話は思い切り自分の好みに走った大人のビターテイストストーリーになってます。
タイトルの「Life is the sum of all your choices」はフランスの作家アルベール・カミュの
言葉で「人生とは、あなたの選択すべての総和である」という意味らしいです。
なかなか考えさせられる言葉ですね~!

ではではストーリー本編スタートです♪





storydariass (62)
私が息を吸い、ヴァイオリンを弾き始めると会場の空気が途端に変わる。

storydariass (1)
この一瞬が好きだ。
やっとここまでのぼりつめることが出来た。

storydariass (2)
曲目はリストのラ・カンパネラ。

狂おしいまでに情熱的な音色をストラディバリが奏で、その音に大勢の観客が感嘆のため息を漏らす。
そのひとつひとつのため息が私の体を包みこみ、さらに高揚させていく。

storydariass (3)
激しく強い旋律を奏でる度、私の中の血が全身に巡る。

演奏が終わると歓声が沸き、自分の選択は間違っていなかったのだと教えてくれたような気がした。







storydariass (20)
コンサートは成功に終わり、私は控え室で華やかな舞台化粧を落としている。
四年前は無名のヴァイオリニストだった私は今では押しも押されぬ一流の仲間入りを果たしていた。

storydariass (22)
私の技術が天才的だった、という訳ではない。
ここまで私を導いてくれたのは一挺のヴァイオリンと一人の男の存在のお蔭だ。

storydariass (23)
私は自分の前に置かれたヴァイオリンを見つめた。

磨き上げられ滑らかな光を発するそのヴァイオリンは、一般人の生涯年収より遥かに高価なストラディバリウスだった。

storydariass (24)
イタリアのアントニオ・ストラディヴァリによって作られた名器。

現存している数は僅か600挺ほどと言われ、貴重価値と音色の美しさからヴァイオリニストだけでなくコレクターからの人気も高い。
私の所有しているストラディバリウスは300年間誰にも弾かれずに貴族の城に眠っていたものだ。

storydariass (25)
その出会いはまさに奇跡で、このストラディバリウスを手に入れた後私は憑かれたように一日中弾き続けた。
少しずつ、だが確実に自分の音になっていく音色を聴く度眩暈を覚えるような幸福感に満たされた。

私はこのストラディバリウスを弾きこなせるようになり、自分でも空恐ろしくなるほど飛躍的に
演奏技術が上がっていくのがわかった。

storydariass (26)
今の私にはもうなくてはならない存在だ。
そしてもう一つは・・・。


storydariass (27)
「素晴らしかったよ。ダリア」

私の名を呼び控え室に入ってきた男。この男こそが今の私を作り上げてくれた存在だ。
私の夫であり、理解者であり、そして最大のパトロン。

storydariass (28)
「ありがとう。これもみんな貴方のお蔭だわ」

夫の差し出した花束を受け取りながら、私は感謝の言葉を忘れない。
夫はどこまでも優しく、私の音楽への情熱を理解しそれすらも愛してくれるという私にとってはストラディバリと同じように「希少価値」がある男だ。

storydariass (29)
無名のヴァイオリニストだった私を見初め、周囲の反対を押し切り妻という地位をくれた。

夫は由緒正しい名家の跡取りでその人脈は広く、ストラディヴァリさえも手に入れて私への贈り物にしてくれたのだ。

コンサートが開けるようになったのも、夫の金力・人脈があってこそ実現できたことだった。

storydariass (30)
私は夫をこれ以上ないほど大切に思っている。

その想いは愛しているという言葉に置き換えても違和感ないものになっていた。











夫の周囲に存在するスノッブな人間関係に疲れたら私はいつもこの集まりに顔を出す。
まだ駆け出しのヴァイオリニストだった頃の仲間たちの集まり。

storydariass (4)
ピアニストや作曲家などかいてよくセッションをして技術を磨きあったことを昨日のことのように思いだす。そんな時間の流れを懐かしいと肯定的に考えるのは私だけのようだ。

仲間たちは皆まだ芽が出ずくすぶったまま、顔を合わせては互いに愚痴を吐きあう。
そこだけ時が止まったかのように。

storydariass (5)
そんな姿を見ていると自分の置かれた境遇というのは何と恵まれたものだろうと再確認できる。
意地が悪いことだとわかってはいるが、それを確認する為に私はここに来るのかもしれない。

storydariass (6)
「コンサート大成功だったんですってね。おめでとう。羨ましいわ」

私にそう声をかけてきたのは同じヴァイオリニストのルーシアだ。
同じ境遇だった頃、彼女のほうが私よりも遥かに世間に注目されていた。才能溢れる美しいヴァイオリニストとして将来は明るいと彼女も思っていただろう。

storydariass (7)
だが私はその頃から彼女に負けたと感じたことは一度もない。

良くも悪くも、彼女は「わかりやすい」「大衆受けする」ヴァイオリニストだ。その技術には奥行きがなく平坦で才能のある音楽家なら誰しもが持っている音の陰影のようなものがなかった。
ただ上手いだけの弾き手なら次から次へと現れる。その波に彼女は飲まれそしてもう二度と浮き上がってくることはないだろう。

storydariass (8)
「どうもありがとう。全部夫のお蔭よ。私はただやりたいことをやらせてもらっているだけなの」

私の返答にルーシアが一瞬嫉妬の表情を浮かべた。

storydariass (9)
私だってあんたと同じ境遇になれば成功できるのに。

彼女の想いは手に取るように分かる。
そして私は思うのだ。
彼女のように惨めにならないで良かったと。あの時の選択は間違っていなかったのだと。

storydariass (10)
その時私達の後ろで仲間たちのどよめきが聞こえ振り返る。

「一体何の騒ぎ?」
「シモンが結婚するんですって」

ルーシアの答えを聞いて私は全身が強く強張るのを感じた。あのシモンが結婚?信じられなかった。

storydariass (11)
「隣にいる女の子がその結婚相手。普通のOLだっていうから驚いたわ。おまけにピアノじゃ稼げないからシモンはピアノを辞めて会社勤めをするそうよ」

ルーシアの言葉を聞きながら私は仲間達の輪の中心にいるシモンに視線を走らせる。

storydariass (12)
端正なマスクに、すらりとした長身はまるでモデルのように美しい。指先は長くしなやかで、普通の女であればその指に触れられたいと熱望するほどの男だった。

そして何より、この仲間内で唯一私が認めたほどの才能の持ち主。

storydariass (13)
それを辞める?結婚の為に?生活の為に?
シモンにそんな決意をさせた女がどれほどのものかと私は隣の佇む女性を意地悪い目で見つめた。

storydariass (15)
シモンと同じくらいの年齢だろうか。

それなりに可愛らしい女だったが、若い女なら誰でも持っている程度の美しさだ。
それに酷く貧乏ったらしい服を着ている。貧相でセンスの欠片もない服装は女を一回りも二回りも醜く見せることを知らないのだろうか。

storydariass (16)
この女は金もなく、生活の為にシモンにピアノを諦めさせ縛り付けようとしている。
私の中で微かな、それでいて確実な嫌悪感が沸いてくる。

storydariass (17)
シモンほどの才能と美貌があれば、いつか音楽を愛する金持ちの目に留まるだろうと思っていた。
それはシモンの体を含めて愛するという意味かもしれなかったが、世に出る為の対価としてはそう大したことではないはずだ。

その可能性をあの女が潰そうとしている。

本来シモンがいるべき場所ではないところへシモンを連れ去ろうとしている。

storydariass (19)
貴方はそこにいるべきじゃない。手を伸ばせば可能性はいくらでもある。
そうシモンに語りかけたが幸せそうな表情を浮かべるシモンには届かなかった。








電話でシモンを呼び出した時、電話の向こうで何故自分が呼ばれたのかと訝っていた。

それでも何とか約束を取り付け、待ち合わせのレストランの名を告げた。
現れないのではないかと気を揉んだが、シモンは約束通りの時間に現れ通された個室に私の夫がいることを知り不思議そうに私を見つめる。

storydariass (31)
「君がシモン君だね。話はダリアから聞いているよ」

夫にはここに来る前にシモンの話をしておいた。素晴らしい才能を持ったピアニストが金に困ってピアノの道を諦めようとしていると。
音楽と芸術をこよなく愛する夫はそれ以上に私を愛していて、私の願いなら何でも聞いてくれた。

storydariass (34)
「そうですか。で・・・お話は一体どんなことでしょう」

「私は直接君の演奏を聞いたことはないが、ダリアが言うのなら間違いないと思ってね。どうだろう、ダリアのコンサートでピアノを弾いてみないか?」

storydariass (33)
ヴァイオリンのコンサートではピアノは必要不可欠なものだ。

勿論今も専属のピアニストがいるが、シモンをくだらない女との生活から逃れさせる為なら首にしてシモンにその仕事を与えようという考えが浮かんだ。

それならばシモンも当座の生活資金には困らないだろうし、何より沢山の観客の目のその才能が触れることできっと良いパトロンを見つけることが出来るだろう。

storydariass (35)
夫の提案にシモンは固い表情を浮かべたまま黙っている。

何故首を縦に振らないのか。こんなチャンスは何回もあることではないのに。

storydariass (36)
「話の途中ですまないが・・・私はこれから人に会う約束をしていてね。ダリアとよく話し合ってみてくれ」

多忙な夫は提案だけすると席を立ってその場から消えた。

storydariass (37)
残された私とシモンはただ黙って互いの考えを探るように見詰め合っている。

storydariass (38)
「少し、風に当たらない?狭い部屋にいると息がつまるわ」

気まずい沈黙に負け私はシモンを個室についている小さなテラスへと誘った。

storydariass (39)
夜の風が私の赤い髪を撫でる。
後ろからシモンが近付いてくるのが分かった。

「悪いけどこの話はお断りさせてもらうよ」
「どうして」

storydariass (40)
「俺はピアノを辞めるんだ。普通の会社に勤めて普通の家庭を持ちたい」

一時の恋の感傷に流されて愚かな選択をしようとしているこの美しい男を何とか思いとどまらせたい。
その思いだけが今の私を支配していた。

storydariass (42)
「貴方は普通のくだらない男に成り下がるつもり?猫の額ほどの広さしかない家のローンに苦しんで、懸命に働いても大した昇給もできなくてなけなしの小遣いで安酒を飲んで管を巻く、そんな先の見えた将来が欲しいって言うの?」

くだらない将来の為に才能を潰す。そんなバカなことがあってはいけないのだ。

storydariass (43)
「・・・俺はそんな未来でもいいと思ってるよ。彼女とならそれも幸せだ」

storydariass (44)
「今だけよ。そんなこと言えるのは。いつかそんな甘い想いは消えて貴方は自分の選択を後悔する日が来るわ」

私の言葉にシモンは小さく笑った。

storydariass (41)
「君に呼び出された時、どうして自分に声をかけてきたのか分からなかった。もしかして俺に気があるのかと勘違いもしたよ。でも違った」

「私は貴方の才能を惜しんで言っているのよ」

storydariass (46)
「違うだろ?君は自分と違う選択をする俺が許せなかった。必死に俺を自分と同じ道を歩かせようとしてだけだ」











「私、婚約したの。だからもう会えないわ」

storydariass (51)
努めて冷静に、その言葉を愛している男に告げたあの日。

この決断が一番自分を幸せにしてくれるものだと信じていたけれど、私の中の微かに残っている良心とも言うべきものがしくしくと痛んだ。

storydariass (53)
「・・・・君を誰にも渡したくない。お願いだ。俺と結婚してくれ」

何度この男からプロポーズを受けただろうか。その度に曖昧な笑みで返した。
そして最後になるその日も同じように私は曖昧な笑顔を見せる。

storydariass (54)
誰よりもこの男を愛していた。
激しい競争の世界に身を置いていた私はこの男が持つ素朴な雰囲気に癒され、抱かれる度に本当の自分に帰れるような気がしていた。

でも。それに将来がかかってくるのなら話は違う。

storydariass (55)
男はいつか田舎に帰り、家業の果樹園を継ぐ。結婚するとなれば私はもう二度と音楽の世界には戻れない。
今は何にも代えがたいほど愛していてもきっといつの日か夢を諦めさせたこの男を憎むようになるだろう。

storydariass (56)
男が手を伸ばす。

storydariass (57)
男の手はいつも土いじりをしているせいで少し汚れ、鼻を近付けると柔らかい土の匂いがした。

その香りに包まれているとなんともいえない安堵を感じたものだ。

storydariass (58)
「一緒に田舎へ帰ろう。君と二人ならどんな生活でも幸せだと思う」

storydariass (60)
男の真剣な眼差しに私は沈黙で答え、背を向けた。










storydariass (47)
気が付くとシモンはもういなかった。
随分長い間昔のことを思い出してぼんやりとしていたらしい。

storydariass (49)
シモンは私に似ている。初めて会った時からそう感じていた。
シモンの言う通り、だからこそシモンには私と違う選択をして欲しくなかったのだ。

storydariass (50)
正直に言うと、怖かった。

シモンが夢を捨てそれでも幸せそうにしている姿を見たら、今の自分の気持ちが揺れてしまいそうで。
あの日の選択を、愛した男の手をとらなかったことを悔やんでしまうのではないかと思うことがただひたすらに怖かったのだ。

だから同じ道を歩かせようとして安心しようとしていたのかもしれない。

storydariass (48)
人は誰しも自分の「選ばなかった人生」と「今歩んでいる人生」を比較して生きていくものなのだろう。

自分の選択が正しかったかどうかなんて誰にもわからないというのに。




storydariass (61)
私は自分の選んだ人生を生き抜いてみせる。悔やまないでいてみせる。


そう心に決め、ビロードのような光を放つ夜の帳に身を滑らせた。




                                                   END
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ショートストーリー 幕末編

こんにちは^^
今日はずっとやりたかった幕末のショートストーリーです。

一話読みきりなので無理やり詰め込んだ感が否めませんが、良かったらどうぞ!

シリアス+アダルト表現ありなので、苦手な方は閲覧をお控え下さいね。

では本編スタートですw




慶応三年。11月15日。京都。

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人を斬ることを生業としている俺は今夜も依頼主に命じられるがままに、近江屋へと赴き二人を斬って来た。土佐藩士であるその二人は北辰一刀流という有名な流派の塾頭をしていたほどの腕前だという話だったが、存外大したことがなかったなどと考えながら縁側から見える景色に目を移した。

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血なまぐさい仕事をした後は必ず彼女に会いたくなる。
この家に通い始めてもう1年が経とうとしていた。

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「隼人様、お茶をお持ちしました」
ふすまがするすると開き、彼女・・・お雪の凛とした声が静かな夜に響く。
「ああ。すまない。・・・これを」
俺のふところから差し出されたのは一分判(小判)の束。
今日の仕事の報酬として依頼主から貰っていたものだ。いわば俺の命の代金。

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「・・・隼人様、こんなにはいただけません」
俺がお雪の手に小判の束を手渡すと、お雪はその重みに驚く。
俺の手につき返そうとするのを俺は強い力でお雪の手の中に押し返した。

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「ありがとうございます。隼人様には何と感謝をしていいか・・・」


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こうしてお雪の生活の足しになるようにと、俺は仕事の度にお雪にその報酬のほとんどを手渡していた。
家族もない。酒も飲まない。そんな俺には大金を貰っても使う術がなかった。

・・・いや違う。
これはお雪への贖罪なのだろうと俺の心の中で声が上がる。


2年前の夏の日。
俺はお雪の父を斬った。

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尊王攘夷を唱える学者だったお雪の父は、京都にたむろする所謂「志士崩れ」を集めては盛んに攘夷を唱え、その思想は反幕的だと危険視した幕府が俺に暗殺を命じたのだ。

暗殺という仕事の特質上、どこの藩にも属さないただの町民あがりの俺が使いやすかったのだろう。

そしてお雪の父はあっけなく俺の振るった剣で絶命した。


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「お父様・・・?」
誰もいないと思った家の奥から女の声がして、艶やかな黒髪の女が顔を覗かせた。
女子供を斬るのは気が進まなかったが、目撃されたとなれば依頼主に累が及ぶかもしれない。
そう思った俺は剣の柄に再び力を込めた。

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だがその女は父の死体に視線を合わせてはおらず、ゆっくりと手探りで壁を伝いながらこちらへとやってくる。
勿論俺のことも見てはいない。

目が、見えないのか。


2013619storysss (27)

見えなければ斬ることもないと俺は静かに剣を鞘に収め、その場を去った。
それで終われば良かったのだろうか。
だが俺はどうしてもその後のお雪が気になって仕方なかった。
お雪の家を見ても金があるとは到底思えず、その上父を亡くした盲目の女のたどり着く先など火を見るより明らかだ。

2013619storysss (28)

お雪の視点の定まらない瞳は、汚いものを何一つ見ていないものだけが持つ純粋な光に満ちていた。
汚れきった俺にはそれがたまらなく眩しくて。
罪の意識と同じ位に既にお雪に惹かれていたのだろうと思う。
仕事の報酬を窓から投げ入れるということを繰り返し、幾度目かに投げ入れた時待ち伏せしていたお雪に捕まったのだ。
心のどこかでこうなることを期待していたのだろうと思う。
そうでなければ逃げることなどいくらでも出来た。お雪は目が見えないのだから姿を見られることもない。

それなのに。

お雪の元に通う日々が始まってしまった。
お雪との逢瀬を重ねれば重ねるほど、俺の想いは強くなりそれと同時に罪の意識が俺を苦しめる。
いっそのこと会うのをやめようか。
何度そう思っただろう。
だがいつも気が付けばお雪の元へと向かってしまうのだった。

2013619storysss (6)

「そのかんざし、毎日つけているのか」
「いえ・・・。かんざしを選ぶ時に隼人様がいらっしゃるような予感がする時があるんです。その時につけてます」
お雪の艶やかな黒髪を彩る可憐なかんざしは今年の祇園祭のときに俺が贈ったものだ。

2013619storysss (5)

普段お雪と会うときはこの家でだけだったが、お雪の願いもあって二人で赴いた祇園祭りは俺の中で大切な思い出になっている。
俺はその時のことを昨日のことのように鮮明に思い出す。








2013619storysss (16)

「綺麗だな」
「え・・・?」

2013619storysss (17)

「か、かんざしが。だ」
「隼人様は意地悪でいらっしゃいますね」
そう小さく頬をふくらませるお雪はどこかあどけなくてまるで童女のような可憐さだった。
「・・・似合っている」

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お雪の黒髪を引き立てているかんざしに手を触れると、にっこりと優しくお雪が微笑んだ。

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その時のことを思い出している俺にそっとお雪が近付いた。
「お茶を・・・」
そう言ったお雪はハッと顔を見上げた。ガラス玉のように澄んだ瞳に俺が映りこむ。

2013619storysss (8)

「血のにおいが・・・」
今日斬った男達の返り血が着物についたのだろうか。汚れはないはずだったが、お雪は目が見えない分
嗅覚が鋭いのかもしれない。
・・・俺の体にしみついた血の生臭さを感じ取ったのか。

2013619storysss (7)

「俺は人斬りが仕事だ」
ずっと隠してきたことを俺は言葉にする。人を斬った直後で心が高揚しているせいだろう。
ぎりぎりのところでお雪と対決したいような、そんな思いが胸を占める。
拒否と嫌悪。その表情をお雪が浮かべてくれたら。俺はきっとお雪を諦められる。


だがお雪は哀しげな表情で言った。
「そうではないかと思っておりました。そうでなければあれだけの大金を私に渡すことなどできませんもの」
「・・・怖くはないのか。人斬りだぞ」

2013619storysss (9)

「外ではそうかもしれません。でも私の前では誰より優しい方です。だから怖いなどと思ったことは一度も・・・」
何故俺のことを否定してくれないのか。出て行けと、もう二度と目の前に現れるなと一言そう言ってくれれば俺は諦めがつくというのに。
怒りに似た激情で俺はお雪の細い手首を強く掴んだ。

2013619storysss (10)

「お前の父を殺したのは俺だ」


2013619storysss (11)

決定的な一言を発し、俺はじっとお雪の顔を見つめる。
唇が小さくわななき、掴んだ手が震えているのが分かった。
「嘘です・・・そんなこと」
「嘘ではない。2年前の夏の日、俺はこの家でお前の父を斬った」

俺は震えるお雪の手に短刀を握らせる。
「俺を殺せ。殺した後土佐藩の藩邸に届けろ。坂本竜馬を殺した犯人だと言えば僅かだろうが金が入るはずだ」
「そ・・・そんな・・・」
「ここだ。首の頚動脈を狙えば女の力でもたやすく殺せる」
首元へ短刀を握ったお雪の手を持っていく。
どうせいつかどこかで野垂れ死にする運命なのだ。それならばお雪の手で死ぬほうがよほどいい。


2013619storysss (13)

ぐっと、短刀を握るお雪の手に力が入る。
俺はお雪がやりやすくなるように、目を閉じ首を差し出した。


2013619storysss (14)

「・・・っ!!」
首に添えられている短刀の先がじりじりと皮膚を圧迫していく。
「・・・できませんっ!!・・・私には・・・できません・・・・」
まるで泣き声のような声を上げてお雪が短刀を畳に落とした。

2013619storysss (15)

「私は・・・たとえ父を殺した相手でも・・・隼人さまのことを・・・」
「お雪・・・」

2013619storysss (12)

俺の胸で泣き崩れるお雪を俺はきつく抱きしめた。







2013619storysss (20)

深い口付けを交わし、ただ互いを求め合う。

2013619storysss (22)

2013619storysss (21)

今まで離れていたことが不思議に思うほど、強くお雪の体を強く掻き抱いた。

言葉はいらない。

2013619storysss (23)

だた互いを呼ぶ声だけが夜の闇の中に消えていった。







年が明けて慶応四年。
俺のような末端の人間にも時代が動いていくのを肌に感じていた。
新政府軍を名のる長州藩と薩摩藩が主力の軍と幕府軍がついに正面衝突をする。

1月3日。鳥羽伏見の戦い。
俺は幕府軍として雇われ、幾人も斬った。刀の切れ味が人の肉の脂で鈍るほどに。
だが幕府軍の劣勢は明らかだった。

2013619storysss (31)

数の上では上回ってはいるものの、戦意が上がらず敵の弾幕射撃にただ逃げ惑うばかり。

刀の時代は終わったのだ。



息を吸う度、激しい痛みが胸を貫く。
抑えた手は赤い鮮血に染まっている。刀で切られるよりもより深いところまで弾丸が入り込み、
血が止まりそうにない。

この戦いは幕府側ももはや負け戦だと思っていたのだろう。
そうでなければあれほどの大金を俺に支払う訳がなかった。
あの金があれば・・・お雪もしばらくは安心して暮らせるはずだ。


2013619storysss (32)

座り込んだ俺の頬にちらちらと白い雪が舞い落ちてきた。

「雪・・・」
目を閉じるとお雪が側にいるようなそんな感覚がする。出血で体が冷えていたのに、いつの間にか
何も感じなくなっている。痛みさえも。





2013619storysss (29)

「隼人様・・・」





お雪。

どうか幸せに暮らして欲しい。

俺のことなど忘れてしまっても構わない。

ただ君が幸せでいることだけが俺の願いだ。


2013619storysss (33)

そして・・・我侭が許されるのなら。

生まれ変わった来世で俺とまた出会って欲しい。

その時は。

必ず俺が君を幸せにするから。


619storyyukiss.jpg

薄れ行く意識の中で俺はお雪の微笑む姿を見た。



                         
                                      




最後まで読んでくださってありがとうございました!
隼人が「坂本竜馬を暗殺した」というようなくだりがありますが
誰が坂本竜馬を殺したかは定かではありません。それを使わせて貰いました。

そして、素敵な着物や和風の髪型の使用を快く承諾してくださったmomo_kaさん本当にありがとうございました^^この場を借りましてお礼申し上げます!

ではではまた♪

Incubus

こんにちは!GWも終わりましたね!私はようやくいつもの日常が戻ってきて嬉しい限りです(笑)
更新もしばらく空いてしまって・・・スミマセンw
それなのにTumblrまで始めてしまう始末ww気軽にSSを載せられるので
こちらばかり更新してしまっておりました><

今日の記事ですがSS用に作ったキャラが気に入ってしまったのでそのキャラを
使ったSSがメインのストーリーです。
アダルト表現も出てきますので(そんなに過激じゃないですがw)苦手な方は
この記事をスルーすることをオススメします!

ちょっとファンタジーちっくなお話ですね。よろしければ以下からどうぞ♪




この森には女性の魂を糧に生きるインキュバスが存在するという。
彼の姿を一目見た女性は魅了され、彼なくしては生きていけぬほどに狂わされてしまう。

20130507SSS (1)
今日もまた一人・・・。

20130507SSS (2)

20130507SSS (3)
娘は彼から視線を外せない。
彼の毒はすでに娘の心に侵食していた。

20130507SSS (4)
延ばされた彼の手を娘はただ受け止める。

20130507SSS (5)

「明日もまたここに来るんだ。いいね」
彼の言葉に娘は静かに頷いた。

20130507SSS (6)
翌日も、その翌日も娘は彼の元へ通った。

彼だけが娘の世界の全てになった。

20130507SSS (7)

「私ずっと貴方の傍にいたい」

「君が望むなら」

20130507SSS (8)

「本当にずっと一緒にいられるの?」

「ああ。永遠に一緒だ」

彼の目が妖しく光ったことに娘は気が付かない。

彼の手に必死に縋りながら後を追った。

20130507SSS (9)

哀れな娘は彼の餌食となった。

20130507SSS (10)

怯えた娘に彼は優しく囁く。

「君を愛しているんだ」

20130507SSS (12)
彼の虜となっている娘はその言葉の甘さに身を委ねてしまう。

自分の命の炎が消えかかっているとも知らずに。

20130507SSS (11)

20130507SSS (13)

20130507SSS (14)

「愛してるわ・・・」

娘がそう口を開いた瞬間に、彼女の姿は次第に靄のようにゆっくりと消えていった。


20130507SSS (15)

「これで永遠に一緒だよ」

娘の魂を心行くまで味わったインキュバスが淫らに笑った。


20130507SSS (16)

そして今日もまた一人・・・・・。


                                     END




この程度のアダルト表現ならセーフかな?wwどこからがアウトなのかいまいちよく
分かっておりませんwwBANされたらどうしましょ(笑)

次回はちゃんとストーリーを更新できるように頑張ります♪
ここまで見てくださってありがとうございました^^

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Loveflower888

Author:Loveflower888
modで色々キャラメイクできるPCゲーが好き。特に綺麗な男子を作るのが趣味。シムズ3がメインですがskyrimの記事も載せています。
今後はまったり更新。気ままにUPしていきます。

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